Vol.2【コラム】プレゼンテーションを考える(1)

Vol.2【コラム】プレゼンテーションを考える(1)

プレゼンテーション・ラボ所長の奥部です。

私は、東京大学大学院でプレゼンテーションエキスパートを対象にして、彼らの素晴らしいプレゼンテーションがどのように生み出されているのかということを研究しています。

本コラム執筆時では、すでに論文を提出し、審査会を残すのみという状況です。(怖いですね)

さて、私は、これまで多くのプレゼンターのプレゼンテーションのお手伝いをさせて頂きました。大学教授から高校生、起業家、ダンサー、フリーランサーなどなど。

当然、彼らのプレゼンテーションをノリとテンションでお手伝いしていたわけではなく、しっかりと勉強をした上で、アドバイスしていました。

「そのスライドは情報量が多いので、ここと、ここを削りましょう」

「この文章、本当にいりますか?」

「来週までにしっかりとこの原稿覚えてきてください」

など…

結構スパルタにやっていたなぁと思います。

そうやって、たくさんの方々のプレゼンテーションに携わらせて頂いているうちに、プレゼンテーションの上達を妨げる、考え方や姿勢、態度について気づかされることがありました。

このコラムでは、そんな上達を妨げる、みなさんの多くが持っている(かもしれない)、プレゼンテーションに対する勘違いについてお話できればと思います。

以降は会員様専用です↓

プレゼンテーションは日常の延長?

私たちは、普段から人と言葉や身振り手振り、表情を用いて意思疎通を行なっています。いわゆるコミュニケーションというやつです。

では、プレゼンテーションとコミュニケーションは何が違うのでしょうか?

プレゼンテーションも、言葉と身振り手振りで、相手に対して何かを伝達する行為です。

そういう意味では同じにみえます。

スライドがある?

確かに、普段道端での会話でスライドは使用しません。

ですが、プレゼンテーションの中にはスライドを使用しないものもあります。

聴き手がたくさんいる?

確かに、多くの場合、プレゼンテーションの聴き手は1人ではなく複数います。

しかし、稀に1人に対して行うプレゼンテーションというのもあります。

実は、プレゼンテーションはコミュニケーション方法の1つであり、明確に区別することはできません。人と人が行う行為は全てコミュニケーションと表現できてしまうのです。

つまり、プレゼンテーションもコミュニケーションなのです。

しかし、誤解してはいけないのは、プレゼンテーションはコミュニケーションの1つであり、コミュニケーションという大きな概念とイコールではありません。

例えば、井戸端会議も人と人が何かしらを伝達し合うコミュニケーションではありますが、プレゼンテーションとはまた違うでしょう。

他にも、道端で偶然友人と出くわし、あいさつをする。これはコミュニケーションですが、プレゼンテーションとは言えないでしょう。

このように、プレゼンテーションとはコミュニケーションの1つのあり方なのです。

では、ここで第1の勘違いです。

それは、「プレゼンテーションは日常的コミュニケーションではない」ということです。

先ほども述べたように、日常的に人は言葉や身振り手振りを用いて人と意思疎通を行なっています。

この「言葉を使って話す」と「人に何かを伝える」、「人に向かって話す」などのプレゼンテーションと日常コミュニケーションの共通点から、プレゼンテーションをどこか、練習など必要ない、普段のコミュニケーションの延長で行うことが可能なものだと思ってしまう方が少なからずいらっしゃいます。

これは、自覚している場合、自覚していない場合の両方があります。

つまり、普段から自分が行なっていること(日常的コミュニケーション)の延長線上として、プレゼンテーションを捉えているということです。

これは非常に大きな勘違いです。

例えば、野球を例に考えてみましょう。

Photo by Daiji Umemoto on Unsplash

当然ながら、私たちのほとんどはプロ野球選手ではありません。プロ並みの腕は持っていません。しかし、バットとボールさえあれば、野球のルールに則り、ボールを投げることもできますし、バットでボールを打つこともできます。

そういう意味では、我々も野球が「できる」のですが、そのレベルはプロとは「異なる」というのは簡単にイメージできるかと思います。

そして、プロは勝利しなくてはなりません。まぐれを狙いにいくのではなく、確実に勝利できるように技術を身に着けています。一方、私たちは、仕事として野球を行なっているわけではないので、試合に勝てれば嬉しいですが、それはまぐれでも良いわけです。

プレゼンテーションもこれと同じで、多くの人が平等にプレゼンテーションをすることができます。しかし、確実な結果が伴うかどうかは、プレゼンテーション力をどれだけ持っているかの問題なのです。

バットをふって、たまたまボールに当たればOKなのであれば、プレゼンテーションの練習は必要ありません。しかし、確実にボールに当てる、さらには、狙ったところに飛ばす。そして、勝つ。ためには、プレゼンテーション力を身に着けるために練習をする必要があるのです。

この、プレゼンテーションは日常的コミュニケーションではないという事実と、それゆえに、普段のコミュニケーションスキルとは別で身に付ける必要のあるスキルであるということは、改めて聞くと非常に当たり前のことのように聞こえるかもしれません。

しかし、これを理解しておきながら、練習に努めない人が以外に多いのが現状です。

>>>2に続く

この記事を書いた人

プレゼンテーション研究所